第11回コンペティション部門 選考総評について

田辺・弁慶映画祭コンペティション部門入選作品の選考委員長である掛尾良夫様より第11回の
入選作品選考にかかる「総評」を頂きましたのでお知らせ致します。



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第11回 田辺・弁慶映画祭 コンペティション選考について


 第11回 田辺・弁慶映画祭の挨拶文でも書いたことだが、今年は応募者の技術的レベルがそ
うとうにアップしていた。それは、ここ数年、コンペ受賞作品がテアトル新宿で上映されてい
ること、また、第10回記念映画「ポエトリーエンジェル」が公開されたことなどが広く浸透し
たからだと思われる。高いレベルの作品から、コンペティション作品を選考することは例年以
上に難しかった。私たちの選考基準は、現時点での完成度よりも、作家の内面から訴えたいも
のがあり、それを広く普遍的に伝えようとする姿勢が感じ取れるかにポイントを置いた。それ
は、プロフェッショナルとして活躍できる監督を輩出するのが弁慶映画祭のテーマでもあるか
らだ。

 今年の傾向をあげてみよう。

@今、世界の映画祭では女性監督の活躍が当たり前のようになっているが、今年の弁慶映画祭
 でも3人の女性監督の作品がコンペに選考された。それぞれの作品は、男性監督が普通に映
 画を撮るように、“女性ならではの視点”を超えた、リキまずに自然体で語っていることに
 新しさを感じた。


A早稲田大学・東京藝術大学・日本大学・日本映画大学・映画美学校など、映画学科出身の監
 督(或いはその卒業制作作品)が過半数を占めている。これは、従来の撮影所に入社して助
 監督から監督へ昇進するという道が閉ざされた現在、映像教育機関の果たしている役割の重
 要性を示していると同時に、映画産業の人材育成における大きな問題の提起ともなって言え
 よう。

B地方を舞台にした作品も過半数を占める。これは、人口が大都市に集中する傾向のなかで、
 示し合わせた訳でもないのに、それぞれの作家が地方に眼を向けたことは、興味深いトレン
 ドと思える。

CLGBTや介護といった現代の問題を描く人間ドラマが増えた一方、SFファンタジーも目立っ
 た。多様なCG効果が容易に処理できるようになったことが増加の要因と思えるが、多くは
 幼少の頃に楽しんだテレビ作品を自分たちで作って楽しんでいるような安易さが感じられ
 た。東京国際映画祭の閉会式で審査委員長のトミー・リー・ジョーンズは、映画祭で出会
 った作品にはカー・クラッシュも大きな災害もないのが素晴らしいと、暗にハリウッドを
 皮肉っていたが、安易なCGの多用は危険である。その中で、自主映画ならではの狭い世界
 の中に普遍的な広がりを見せる作品もあった。




                  コンペティション部門 選考委員長 掛尾良夫

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